RSGT2020感想

今年もRSGT2020に参加してきました!今回で2度目の参加です。
昨年は自分的にはスクラムの実践論的な話だったり、理想的な開発スタイルの紹介が印象に残ったのでしたが、今回はスクラム実践者がどうやって組織やメンバーと向き合っていくのか、アジャイルを組織に根付かせるために自分は今後どうやって振る舞うべきかの深淵を探るような部分があり、自分の中に重く響いてくるような内容でした。

無名の質

一日目の基調講演は、James "Cope" Coplienさん。
スクラム未経験者がスクラムを知り、実践し、体得し、やがて教える立場になるまでを「十牛図 - wiki」になぞらえていくという公演内容でした。
スクラム実践者がスクラムとどう向き合っていくのかを考えさせられる内容でした。
いろんなステージでチームや組織によってもっとよい方法があるはず、と奮闘してる人たちがいて、それぞれ今どんな立ち位置にあるのかをこの十牛図に当てはめた時に、自分の位置はまだまだ「跡牛」、つまりスクラムに出会い、学ぶべきものを知り、何らかの役に立つのではないかと希望を持ち、それを追いかけてるくらいなのかなと。

印象的だったのが「無名の質」という言葉でした。
それは説明せずともその価値の本質を理解できていて体得できており、あえて名前をつける必要がない状態や心境のことだそうです。
組織の全体が価値を共有できていたら、働きやすいだろうなと。
今後目指すべき方向性が見えた気がしました。
自分の中では、なんとなく横綱双葉山の「イマダモッケイタリエズ」という言葉を思い出したりしていました。

X理論Y理論

二日目の基調講演は、Michael K Sahotaさん。
ざっくり言うとアジャイルを組織に根付かせるためにどうしたらいいかという内容でした。
アジャイルな組織に変わっていくにはいくつかのフェーズを経る必要があって、いきなりティール組織みたいなフラットな組織にはならない。まずは少しずつ変えていくというアプローチ必要。
theory-Xとtheory-Yという話が出てきて、これがすごくわかりみのある内容でした。
ググってみるとダグラス・マクレガーによって提唱されたXY理論のことだそう。
X理論が「人間は本来なまけたがる生き物で、責任をとりたがらず、放っておくと仕事をしなくなる」という行動モデルで、
一方、Y理論は「人間は本来進んで働きたがる生き物で、自己実現のために自ら行動し、進んで問題解決をする」という行動モデル。
X理論の行動を取るメンバーに対してはマイクロマネジメントが必要になり、Y理論の人たちには自主性を尊重する経営手法が有効というお話し。
なので逆に、X理論の人たちに対して自主性を主張してもなかなか響かないし、Y理論の人たちをマイクロマネジメントすると逆効果。
スクラムでいうところの自律的組織を目指すにはX理論-->Y理論に変化する必要がある。

そしてさらに、これは裏を返すと自律的な組織になるということはマイクロマネジメントするためのマネージャーが不要になるということにもつながる。これはマネージャの立場からすると、自分の存在意義を否定されることになる。
なのでスクラムの導入はマネージャー層との対立を生むことがしばしばある。
こういった話はなんとなく耳にするけど、旧態然とした組織では依然として組織のヒエラルキーに沿った指揮がされていて、なかなか思うように進まないことがよくあり、自分の現状に照らし合わせてみたときに、身動きがなかなかとれない自分の立ち位置を言語化されたような感覚がありました。

2つの基調講演から感じたこと

日本の多くの現場では、アジャイルの本質的な価値を中間管理層や経営者が理解しておらず、アジャイルなプラクティスの導入期には上層部に対して根気強い説明を繰り返し行うことが必要な場面がまだまだ無数にあると思います。
なんとなく思ったのは、

  • アジャイルの価値をトップやマネジメント層が理解する必要がある
  • マネジメント層がY理論を体現することで、X理論からY理論へのシフトが始まる

この2つには大きな隔たりがあるのが現状なのかなということ。
そしてこの2つの間に、

  • トップやマネジメント層がアジャイルの価値を理解するには?

の問いがあるはずで、ここが鶏と卵のように自分の中で消化できず答えが見えない。
おそらくここは状況によるということなんだろうけど、ただ、漠然とした見えない何かというわけではなくなったような、モヤの中にぼんやりうっすら形が見えたような気がしました。

このヒエラルキー構造の中で「トップやマネジメント層がアジャイルの価値を理解する」を実現するための方法として、一つには「アジャイルの本質的な価値を理解した人がトップやマネジメント層に立つ」ということがあると思うんだけど、ということはこれからトップやマネジメントに立つであろうエンジニアの一人でも多くの人に「アジャイルの本質的な価値」を広められることが必要なのかと。

そしてそのための原動力となっているのがコミュニティの力で、RSGTのようなカンファレンスでこの価値を体感したり共有できる場を提供し続けていることこそが裾野の広がりを作り、X理論-->Y理論のシフトを促し、ひいては日本全体のエンジニアのハッピーにつながっていくんじゃないかと。

次回のRSGTで10回目を向かえるとのこと。
このコミュニティを継続してこられた運営の方々には本当に心から感謝&尊敬します。

イベント告知

そして!次は札幌で4/17(金)-18(土)にスクラムイベント
スクラムフェス札幌2020
を初開催します!
著名なスクラム実践者と身近に接することができるイベントです。
実際にRSGTで登壇された方々からも、既にたくさんのプロポーザルを出していただいております。
札幌でも一人でも多くの方にスクラム実践者のセッションを聞いて、実際に議論をしたり共感したり、何かを感じ取ってもらえるようなイベントになるといいなと思いながら日々準備をしております。

まだEarly birdチケット販売していますので、色々な事情でRSGTに行けなかったという方も、RSGTの余韻をもう一度札幌でという方も、ぜひエントリーお待ちしています。

そしてもう一つ、アジャイル札幌のコミュニティで初心者向けのスクラムイベント
やさしいスクラム
を開催します。
こちらはもう定員に達してしまいましたが、需要があればまた開催するのでぜひこちらもチェックしてください。

すみません、最後はしっかり広告になってしまいましたが、こちらからは以上です。

Last Updated: 2020-3-27 1:59:55